「無理して三振を取りにいっても疲れるだけだってのは悟ったね。」
高校3年の時に三振にこだわり145イニング無失点記録が途切れたのを振り返って、そう語っていますが、1984年7月24日のオールスター第3戦、全セの2番手として4回から登板。8者連続三振という記録にも記憶にも残るピッチングを見せてくれます。
落合博満にブーマーという3冠王ふたりを擁する全パリーグの強打者たちを、バタバタと三振ににとる姿は強烈な存在感を放っていました。
9人目の打者だった大石大二郎にカーブを投じて内野ゴロになり、記録は途切れましたが、なぜストレートを投げなかったのかと論議の的になってしまうのも、江川らしいといえます。
後に本人は「カーブで一球外して、4球目にストレート勝負」というつもりだったとか、「10連続三振を狙って」大石が三振し、振り逃げしてくれるように捕手がとれないくらい外角へ投げるつもりだったなど、嘘とも本当ともつかないこと語っています。
しかし8人の三振の決め球を見ると半分の4人が、最後はカーブで三振しています。それで江川の快速球が頭にあったパリーグの打者たちが、実はカーブに翻弄されていたのがわかります。あらかじめ計算された攻めだったのでしょう。
江川卓